檻の中の独裁者が、心の扉を開けるまで|Story

ヒトラーが築いたベルリンの壁にて。
2025年8月、次男との世界一周の途中で。

とかく、子どもに口を出すことにしか関心のないママだった。

良かれと思って。

小さなコミュニティ――お家の中で、
ワンオペながら、ヒトラーのように君臨していた過去の私…
24歳で結婚しママになり、そこからずっと。

社会を知らず、駆け引きも知らず、
子どもと、その周囲の世界だけで生きてきた。

6年前、裁判で、
自分が築き上げてきたものすべてを
否定されたような気がした。

生き方そのものを否定されたようで、
メンタルは崩壊した。

距離感がわからない。人間関係が怖い。
誰とも会いたくなくて、自分から関係を絶つようになった。

感情が動かないわけじゃない。
でも表情はなくて、ただ涙だけが頬をつたう。

心と体と感情が、どこにもつながっていないような感覚。
とてもアンバランスだった。

落ち着こうとすると、突き放されたり、
安心できると思った場所で、またバランスを崩したり。
そんなことを繰り返していた。

そんな私に、どんな時も否定せず向き合う人が現れた。

何かを言われて、「私はそうは思わない」と返すと、
「そういう考え方もあるよ」と言う。

それがいつも可笑しくて、「否定しないんだね」と言うと、
「どれが正解かなんて、わからないんだよ」と返ってくる。

私が試しても、怒っても、その人は動じない。
対話を重ねるうちに、相手だけでなく、
自分の考え方まで整理されていく感覚があった。

振り返れば、助けてくれる人はたくさんいた。
絶望の中で、私の周りを通り過ぎていった人も、
手を差し伸べてくれた人たちも、確かにいた。

でも私は、誰にも心を開けなかった。怖かったから。

多くの人と出会い、それぞれが痛みを抱えていることを知った。
私はその痛みに、向き合うことができなかった。

評価も期待もせず、どうでもいいと思ってぶつかったとき、
それが結果的に、私自身を取り戻すきっかけになった。

他者との関係を通して、私はようやく、
自分という人間が分かり始めた。

小さなお家の中で独裁者だった私が、
今は、自分の意思で扉を開けている。

だいぶ遅いし、まだまだ出来てないけど、
自分を認めて、ありのままで生きていける気がする。

置き去りにしてきた自分と向き合い始めた。今までを取り戻すように。