経営者としての信頼──銀行融資で“言ってはいけない言葉”と裏事情

表に出ないけれど、通過率は確かに上がる

旅館を運営するにあたって融資が必要になる。では、だいたい自分はどれくらい借りられるのか?どのような金融機関が適しているのか?──そんな疑問から、政策金融公庫などを含めて融資の相談に回ることにしました。その際に、日頃から融資をたくさん引いている不動産業の経営者からアドバイスをいただきました。

あるセミナーで教わったのは、銀行融資における“NGワード”。理屈としての建前の理屈だけでは足りず、現場の慣習と、水面下で作用する力学まで含めて設計すると、現実の通過率は上がるという話でした。情報は必ずしも公表されず、完全に正しいとも限らない──それでも「使える」ものは使い倒す。私はそう解釈しています。

「建前の理屈 × 現場の慣習 × 水面下の力学」:三方向から整える

建前の理屈=数字・根拠・返済計画。
現場の慣習=言い回し、面談の順序、提出物の整え方。
水面下の力学=行内の方針・時期・担当者の裁量・支店の目標など。
この三つが噛み合うと「同じ内容でも通る」。だから理屈だけを全面に出さず、相手が飲み込みやすい形に整えて届けることが実務です。

「気に入られれば通る」は本当に“ある”

審査は制度で運用されつつも、最初に触れるのは“人”。裁量の幅がある以上、誤差は当然に出ます。
だからこそ、本音と建前をわきまえる=相手の立場で話すが重要。私は属性が高くありません。だから余計に、良いお客様を演じることまで含めて準備します。

融資のNGワードと“通る言い換え”テンプレ

  • NG:「とりあえず枠だけください」
    OK:「事業計画に即した運転資金○ヶ月分の枠設定をご相談したいです」
  • NG:「最短でいくらまで出ますか?」
    OK:「計画達成に必要な上限シナリオと、現実的な基本シナリオの目線をご教示ください」
  • NG:「他行が○%と言ってます」
    OK:「御行の方針と合う条件レンジを理解した上で、長期の取引設計をしたいです」
  • NG:「売上は上がる予定です」
    OK:「受注確度×時期を一覧化しました。裏取り資料も添付しています」
  • NG:「税金は後回しで…」
    OK:「納税計画は資金繰り表に反映済みです。時期と金額はこの通りです」
  • NG:「赤字でも大丈夫ですよね?」
    OK:「一過性の投資で、来期黒字化の分岐点をこの指標で管理します」

低属性でも通す:「演じる」ための外観づくり

  • 時系列の整合:事業計画 → 資金繰り → 返済計画 → 裏取り資料の順で綴じる。
  • 定量主義:期待ではなく数字。前提は“誰が見ても”再現できる形で。
  • 提出物の清潔感:A4横・同フォーマット・図表キャプション・日付入り。
  • 関係性の設計:面談は「相談」から入り「お願い」で閉じる。対立を作らない。

面談前チェックリスト(5分で最終確認)

  • 1枚で全体像(事業全体図・資金使途・回収源)が伝わるサマリーを用意
  • 資金繰り表は月次12か月、税・社会保険・賞与・返済を反映
  • リスク対応:売上▲20%でも債務返済余裕(DSCR)を確保できる根拠
  • 裏取り:見積書・契約書・受注メール写し・在庫/回収サイト推移
  • 言い換え原稿:NGワード→OKフレーズをプリントして持参

まとめ:理屈を“飲み込みやすく”するのが仕事

建前の理屈は土台。慣習で形を整え、水面下の力学に沿うタイミングで出す。これが現実の確率を上げる運び方。属性に自信がなくても、設計と準備で「通る」側に寄せられます。

──旅館経営に向けた融資の準備は、まだまだこれから始まったばかりです。計画を整え、現場で試行錯誤しながら、一歩ずつ形にしていきます。

要点サマリー(NG→OK言い換え/実務対応)

観点 避ける(NG) やる(OK) 一言メモ
依頼の姿勢 枠だけ・最短いくら 計画連動の必要額とレンジ提示 相手の審査観点に合わせる
根拠 予定・感覚値 裏取り資料・受注確度 定量と証拠で語る
資金繰り 税金後回し 税・社保・賞与・返済を反映 資金繰り表は12か月
リスク 「たぶん大丈夫」 売上▲20%でもDSCR確保 下振れ前提で準備
言い回し 他行マウント 方針レンジの確認と長期関係 対立を作らない
提出物 バラバラ体裁 同フォーマット・日付・キャプション “見た瞬間にわかる”